方言にも、いろいろなパターンがあります。
語尾に助動詞などがつく方言はだれでも理解できると思います。
例えば、「じゃん」「だっぺ」「ずら」「じゃけん」「たい」「ねん」「ばい」など…
「しばれる」「おおきに」「めんそーれ」等のように全国区の方言も問題ありません。
また同じ言葉でも、イントネーションが違うこともありますが、理解するうえでは何のの問題もありません。
さすがに、本格派の津軽弁になるとフランス語並みに理解できません。
これは諦めが付きます。
津軽弁は飛沫も飛ばないような感じなので、今は推奨される方言かも知れません。
しかし、最も注意しなくてはいけない言葉は、イントネーションも同じ、ハッキリと聞き取れる、なのに、一般的な意味と違う方言です。
・「相手」のことを「自分」
・「(身体が)きつい」ことを「えらい」
・「やめる」ことを「おく」
・「片付ける」ことを「直す」
・「捨てる」ことを「ほーる」
・「(鍵などを)かける」は「かう」
・「走る」ことを「飛ぶ」
と言ったりするのです。
この種の方言は注意が必要なのです。
方言と言うといつもKさんの事を思い出します。
当時、Kさんは、会社の隣の部に所属し、偶然うちの近所に引っ越して来たのです。
これで、この辺で悪いことは出来ないと思いました。(何もしてませんが)
Kさんは静岡からの転勤でした。
家族での引っ越しで、当時は息子さんが小学5年生、Kさんは40歳だったと思います。
Kさんは、中学・高校と野球部に所属し、転勤前まで浜松で草野球チームの監督をしていたそうです。
こちらに引っ越してきてすぐ、小学5年生の息子さんが所属した少年野球チームの監督に就任しました。
野球も指導も上手で、いい監督が来たと、みんな喜んでいたようです。
ある日曜日、近所を散歩していると、公園のグランドでは野球の試合をやっていました。
Kさんが監督する少年野球チームの試合でした。
天気もよかったので、ちょっとベンチの横で試合を観戦しました。
ベンチにはKさんは居ませんでした。
Kさんは監督ですが、その時は3塁のベースコーチをしていました。
スコアーボードを見ると6対5です。
Kさんのチームは1点差で負けていましたが接戦のようです。
そしてKさんのチームのランナーは3塁に居ました。
Kさんは、コーチャーズボックスで会社にいる時よりマジメな顔をしてました。
サードランナーは息子さんではなく、低学年生のようでした。
そして、バッターはライトフライを打ち上げました。
これは「犠牲フライになるな。同点だ」と思いました。
ライトは、ちょっと下がってフライをキャッチしました。
しかし、サードランナーはタッチアップしないのです。
ベースの上で動かないのです。
犠牲フライを知らないのでしょうか?
それを見たK監督は、あわてて叫びました。
「飛べ! 飛べ!」
こんな大事な時にまさかの静岡弁。
ランナーは何を言われているのか理解できないようです。
K監督の顔を、おびえながら見つめていました。
K監督は更に大きな声で、「飛べ、飛べ~」と叫びました。
K監督を見つめていたランナーは、あまりの形相に恐怖を感じたのか、ベースの上で飛び跳ねたのです。
それはそれは、高くて綺麗なジャンプでした。
このグランドで「飛べ」は「走れ」と翻訳できていたのは、静岡生まれのK監督と息子さんと静岡が実家の妻を持つ私だけでした。
大事な時に静岡弁はダメずら~