計画性のない生活

サラリーマン生活も終盤を迎え、日常の気になることや面白いことを書かせていただいてます

親切な台湾の人たち・・・その3(九扮~十分)

台湾旅行2日目の午後は台北から九扮まで高速バスで行き、そこからバスと列車で十分へ行ってきました。

 

九扮では、いわゆる千と千尋の湯婆婆の屋敷のような風景を見てきました。

十分では、ランタンに願いを込めて打ち上げてきました。

f:id:keikakusei9:20191005234443j:plain
f:id:keikakusei9:20191006150139j:plain

しかし、湯婆婆の屋敷に行く前の、九扮から見る海の景色がノスタルジックで素敵でした。

なぜが、懐かしさを覚えたのです。

f:id:keikakusei9:20191005234455j:plain

私の妻の実家は田舎の海の近くにあります。

義母は今も細々とお店をやっています。

決して儲かっているわけではなく、赤字にならなければいいという程度の商売です。

店をやっているという自負、店を開けるという日課、仕事があるという優越感などが、生きがいになっているのならば思い、放っていました。

本当は、そろそろ引退して欲しいと思っていましたが、こちらからは言えませんでした。

 

 あるとき、義母が「そろそろ店を閉めたい」と言い出したのです。

“渡りに船” “地獄に仏” “定年で再雇用” です。

「お母様!敗退ではありません。勇退です。名誉ある撤退です!」

その後の義母との話し合いの結果、お店は売却する方向で決まりました。

本人が望むなら、近くのマンションを借りるなり、老人ホームに入るなり隠居した方がいいと妻も私も思っていました。

そのためにも、妻は「実家を売るオンナ」と化したのです。

 

あれから何ヶ月が経ったでしょうか?

一向に実家が売却される気配はありません。

 

バブルの頃ならともかく、今どき田舎で商売をやろうと思う人はめったにいないようです。

別荘が欲しいと思うような、余裕のある方もそうそういるとは思えません。

そう簡単に売れないのです。

 

古い家なので、修理などで維持費もかかります。

田舎とは言え、固定資産税もばかになりません。

 

 

悩んだ妻は「実家売却」の願いを十分のランタンに託したのです

 

九扮からバスで「瑞芳駅」まで行き、そこから列車で十分まで行くことにしました。

バスは既に九扮の停留所に止まっていました。

運転手さんに行き先を告げ、料金を払い後ろの席に座りました。

バスはゆっくりと九扮の山道を下って行きました。

しばらくすると車内アナウンスが「瑞芳なんとか」と聞こえた気がして、降りようとしたところ、前の席に座っていた台湾のオバちゃんが、私の前に手を出して止めたのです。

なぜ止めたのか判りません。

一般の人が降りれない停留所なのでしょうか?

確かに停留所の周りに、駅は見えませんでした。

そして次の停留所に止まると「降りるよ!ついてきな!」という感じで、オバちゃんも一緒に降りたのです。

きっと私たちがバスに乗るとき、運転手さんに行き先を告げたのを聞いていたのかもしれません。

 

そして、バスを降りたオバちゃんは、目の前の駅を指差しました。

そこには「瑞芳駅」と書いてあったのです。

私はオバちゃんに「謝謝!」と言いました。

オバちゃんは手を上げて去っていきました。

 f:id:keikakusei9:20191005234403j:plain

台湾の人は親切なのです。

 

路線図では、「瑞芳駅」から4つ目が「十分駅」です。

4つ目だから十分ぐらいかなと思いましたが三十分ぐらいかかりました・・・(不要な文章です)

 

そして十分駅に着くと、反対側のホームには人がいっぱいでした。

私たちを乗せた列車が発車した線路には猫が寝てました。

f:id:keikakusei9:20191006142132j:plain

改札を出て線路沿いを戻ると、ランタン上げの客引きが何人か居ました。

客引きのお兄ちゃんはスマホに翻訳アプリ入っているようで、スマホに話しかけると、日本語が表示されました。

スマホアプリとの交渉で、ランタン4色(4面)に願い事を書いて飛ばすコースで妥結しました。

1,000円もしなかったと思います。

娘と私は「家族の健康」「娘の恋愛成就」「キャリアアップ」「私の定年後再就職」などを書き、そして妻は「実家売却」と書きました。

f:id:keikakusei9:20191004091826j:plain

そして家族の願いが書かれたランタンを掲げ、線路の上に立たされました。

客引きのお兄ちゃんは、ランタン飛ばしのおにいちゃんになっていました。

一面ずつ写真を撮ってくれました。

4面の写真を撮り終えると、もう一人のお兄ちゃんがランタンに着火しました。

着火が済んだら、また私たちにランタンを持たせ「手を放して!」と叫びました。

義母と妻の願いが込められた「実家売却」ランタンは、夕暮れの十分の空に舞い上がっていったのです。

 f:id:keikakusei9:20191005231737j:plain

十分のランタン飛ばしのおにいちゃんは「きれい、きれい」「願い叶う」と言ってくれました。

 家族一同、ランタンが上がっていくのを確認し、改めて「実家売却」を誓いました。

万感の思いが込められたランタンを見上げる妻の目には、涙が光っていました。

 

ランタンが見えなくなるまで、暮れかかった空を見上げていました。

次々に、他の人の願いがこめられたランタンが打ち上げられて、だんだん空がにぎやかになってきました。

f:id:keikakusei9:20191006141629j:plain

毎日、毎日、多くの人の願いが十分の空を埋め尽くしているのだと実感していました。

 

その横には、新たなお客さんのランタンの写真を撮り終えたランタン飛ばしのお兄ちゃんが「手を放して!」と叫んでました。

ランタンの上がっていく写真を撮りながら「きれい、きれい」「願い叶う」と見事な軽さで叫んでいました。

 

台湾の人は親切なのです。