私の勤務する会社では、年1回、人間ドックを受診させてくれます。
受診するときは、2.3日前から酒や高カロリーの食事を控え、γ-GTPや中性脂肪、血糖値の数値を少しでも良くみせようと抗うのです。
学生時代からの一夜漬けの癖は直りません。
数値が基準を超えたら、酒を控えればいいとか、食事制限すればいいとか、薬を飲めばいいとか、改善できると思い込んでいるのです。
最近は、健康面だけでなく物忘れが酷く、人の名前が覚えられません。
そればかりか、自分が行った事すら忘れることがあるのです。
「それ、前に言ってたじゃない」とか「それ前にしてくれたじゃない」とか言われてしまうことがあるのです。
確かに言われてみれば、そのような気はするのですが、その瞬間は本当に忘れているのです。
そんな時は「ああ、そうだった、そうだった」とあわてて取り繕うのです。
取り繕うのも認知症の特徴だと聞いたことがあります。
これは、相当進行しているなぁと不安な日々を過ごしていました。
そして、今回の人間ドックの際、オプションで脳ドックも受けることにしました。
脳ドックは、認知症の診断のためではなく、脳梗塞などの検査が主な目的でしょうが、極端に脳が萎縮していたら何かアドバイスがあるのではないか?
物忘れ外来を照会してくれるのではないか?
今は、認知症の進行を遅らせる薬もあるようですし、予防トレーニングもあるようなので受診を決断しました。
一方で、会社と病院が繋がっていて、私の個人情報である「脳の写真」が会社に流出しないだろうか?
脳がスカスカであることがバレないだろうか?
そして、急に異動の人事発令が出ることは無いだろうか?
との不安もありましたが・・・
人間ドックと脳ドックは、自分で直接病院へ申し込みます。
脳ドックの申し込みの際、CT検査とMRI検査のどっちにするか聞かれました。
「CTは64列マルチスライスと128列マルチスライスがあります」と言われました。
脳の輪切りを厚切りにするか薄切りにするかってこと?
玉ねぎの輪切りかオニオンスライス用とどっちのカットにしますかてこと?
楊枝の刺さった輪切りの玉ねぎとカツオブシが掛かったオニオンスライスが頭に浮かびました。
MRI検査の方が料金は高かったのですが、CTは玉ねぎの映像が頭から離れず、MRIを選択しました。
そして、人間ドック検査の当日が来ました。
4Fで受付を済ませ、検査着に着替えて5Fの検査室に向かいました。
看護師さんは「最初にMRI検査を行いますので1Fのエレベータ奥の診察室に行って下さい」と指示されました。
MRI検査室の受付に行くと
「初めてですか? ちょっとうるさいですが、20分ぐらいですので我慢して下さいね」
とやさしそうな看護師さんに言われた。
遠い昔、吉原千束あたりで「初めてですか・・・」と同じようなことをやさしく言われた記憶が思い出されました。
ちょっとしたことが思い出せない不安で、脳ドック検査を受けているのに、この期に及んで、どうでもいい昔の事をハッキリ覚えている自分が不思議でした。
大事なことは脳ではなく身体で覚えているのです。
そして、穴の空いた大きなカプセルの前のベットに横になりました。
MRI検査機の大音量を和らげるためヘッドホーンをつけます。
いよいよベットはゆっくりとカプセルの穴に吸い込まれていきます。
そして、「千束の風に~♪ 千束の風になって~♪」ガーン、ガーン、ガーンと大音量が響くカプセルの中で口ずさみながら20分。
無事MRI検査が終了しました。
その後、通常の人間ドックの検査を受け、お昼前にはすべての検査が終わりました。
受付で支払を済ませると、「検査の結果は14:00になりますが、いらっしゃいますか?
それとも結果は郵送にしますか?」と聞かれました。
会社は1日休暇を取っていたので、「14:00伺いますと」言って、いったん病院を出ました。
14:00に再び病院に向かうと、すぐに診察室に通されました。
きれいな女医さんが座ってました。
既に血液検査の結果も出ているようで、特に異常はないとの診断でした。
いよいよMRI検査の結果発表です。
「後ほど専門医が確認しますが、脳梗塞や脳腫瘍も見当たらず問題ないと思います」との診断でした。
「何か不明なことはありますか?」と聞かれたので
「先生。私の脳は年齢からみて、相当萎縮しているのでしょうか?」と質問してみた。
すると先生は
「特に萎縮はないと思いますよ」との答えでした。
私はうれしくて、必要以上にお礼を言って診察室を後にしました。
帰りの電車でも、窓ガラスに映る自分の顔がニヤついているのがわかりました。
相変わらず、人の名前は思い出せない日々は続いていますが、加齢による物忘れだと、無理やり納得してサラリーマン生活を過ごしています。
今現在、人事発令は出ていません。